コロナ下でリモートワークが広がったことなどを背景に、副業に取り組み、給与とは別に個人的な収入を得る人が目立ってきた。こうした中、注意しなければならないのが税金の取り扱いだ。勤め先から源泉徴収をされない所得は、一定額を超えると、確定申告をしなければならない。納税に不公平が生じないよう、国税当局が「無申告者」への監視を強めている。
関係者によると、動画をユーチューブに投稿し、その報酬などとして約3600万円を得ていた男性が、確定申告をしていなかったとして、関東信越国税局の税務調査を受けた。重加算税を含む約700万円を追徴課税されたという。
男性はかつて会社員だった。当初、国税局に対して「確定申告が必要なことを知らなかった」という趣旨の説明をしていたという。
ところが、さらに調査を進めた国税局が、新たな事実をつかんだ。
税務調査を受けた場合にどう対応するか。そんな動画を視聴していたという。
さらに追及を受けた男性は、意図的に申告をしなかったことを認めた。国税関係者は「確信的な無申告だったのに、それを隠そうとする。言い逃れの典型例だ」と指摘する。
給与以外の所得、20万円超で申告が必要
国税庁によると、確定申告が必要になるのは、給与以外の所得が年間で20万円を超えたケースなどだ。
意図的な申告逃れだけでなく、所得税を源泉徴収されてきた会社員が副業を始め、申告の必要性を認識していないケースもあるという。ただ、所得を隠す意図がなかったとしても、申告を怠れば、本来納めるべき税金だけでなくペナルティーとして加算税などを余分に負担しなければならなくなる。
国税庁はホームページで、所得にあたる具体例を紹介し、注意を呼びかけている。原稿料や講演料、ベビーシッター、家庭教師といった個人的な取引で得た収入のほか、暗号資産(仮想通貨)の売却益、競馬などギャンブルで得た配当金なども対象になる。
国税庁によると、2022年6月までの1年間に、所得税の確定申告をしなかった人に対する税務調査は、前年度比で約3割増え、3828件に達した。
あわせて所得の申告漏れ額も前年度比約1・4倍となる1119億円にのぼり、追徴税額は同2倍超の190億円となった。
国税庁は「納税者に強い不公平感をもたらすため、無申告者については厳格に対応する」としている。
今年の確定申告は3月15日まで。昨年までの3年間は、新型コロナの影響を考慮して申告期限を延長したり申告手続きを簡素化したりしたが、今年はコロナ前と同じ手続きになっている。(原田悠自)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル